① よくある光景
「もう少し工夫してほしい」
「前回の感じ、ちょっと違ったかな」
こうした言葉を受け取ったとき、
「具体的に何を変えればいいのか分からない」と感じた経験はないでしょうか。
一方で、伝えている側もまた、
「そこまで強くは言いたくない」
「関係を悪くしたくない」
と考えながら、言葉を選んでいることがあります。
こうした“遠回しな指示”は、
どの職場でも見られる、ごく日常的なやり取りです。
しかし、それが繰り返されると、
期待のズレや手戻り、そして見えないストレスが積み重なっていきます。
③ TTIの視点
なぜ人は直接的に言わないのか(言う側)
遠回しな表現は、単なる伝え方の問題ではありません。
その背景には、「直接的に言うことによる影響への配慮」があります。
育成の場面では特に、
- 相手の自信を損なうかもしれない
- 関係がぎくしゃくするかもしれない
- 指導が否定として受け取られるかもしれない
といった懸念が働きやすくなります。
その結果、あえて表現をやわらげたり、
相手に解釈の余地を残す伝え方が選ばれます。
これは個人の性格というよりも、
関係を維持しようとする働きの中で自然に起きていることです。
「察する力」が問題を見えにくくする(受け取る側)
一方で、受け取る側にも特徴的な前提があります。
日本の職場では、「察すること」が暗黙の期待として存在する場面が少なくありません。
そのため、曖昧な指示であっても、なんとか意図を汲み取ろうとします。
この姿勢自体は重要ですが、同時に、
- ズレがあっても表面化しにくい
- 理解できる人に負荷が集中する
- 分からなかった側が言い出しにくくなる
といった状態を生みます。
結果として、「分かっているはず」「伝わっているはず」という前提が強まり、
問題が見えにくくなっていきます。
その結果、期待が言語化されないまま運用される
こうして、言う側は直接的に言わず、
受け取る側は察しようとする関係が続くと、
期待は明確に扱われないまま運用されていきます。
- 何をもって「できている」とするのか
- どこまで求められているのか
- 何がズレているのか
これらがはっきりしないままでも、仕事は一見回ります。
しかし実際には、「なんとなくの共通認識」に依存しているため、
小さなズレが蓄積し、あるタイミングで遠回しな修正や不満として表面化します。
遠回しな指示は、この構造の中で生まれる“結果”とも言えます。
④ 育成の現場で見直したい4つの問い
育成や指導の場面において、次のような問いは立てられているでしょうか。
- 期待は、どの程度まで言語化されているか
- 「できている/できていない」の基準は共有されているか
- ズレが生じたとき、それは見える形で扱われているか
- 「言わなくても分かる」は、誰の前提になっているか
これらは、伝え方の工夫だけではなく、関係と構造の設計に関わる問いです。
⑤ 遠回しな指示の背景にあるものに目を向ける
遠回しな指示は、どの職場でも自然に生まれるものです。
それ自体を否定する必要はありません。
ただし、その背景にある「期待の曖昧さ」が続くと、
育成や業務の質に少しずつ影響を及ぼしていきます。
教育担当者にとって重要なのは、
どう伝えるかだけではなく、
期待がどのように共有されているかに目を向けることです。
日々のやり取りの中で、
その期待は言葉になっているのか。
それとも、関係の中に埋もれているのか。
その違いが、学習の質と再現性を左右していきます。
※本記事は、Crucial Learning社の公開記事を参考に、
Talk to Impact株式会社の視点で日本の組織課題を整理したものです。