対話が生まれない「よくある問い」
「この言い方を使えば、相手を納得させられますか?」
「反発されずに、こちらの案を通す方法はありますか?」
「感情的にならせずに、相手を動かすコツはありますか?」
人材開発やリーダー育成の現場で、こうした問いが出てくることは珍しくありません。
ただ、私たちTalk to Impact(TTI)は、これらの問いに触れるたび、少し立ち止まります。
なぜならこの時点で、
「自分はどうしたいのか」と「相手にどう振る舞わせたいのか」が、すでに分離しているからです。
日本はしばしば「本音と建前の文化」と言われます。
けれども、その前提を当然のものとして受け入れ続けた結果、
私たちは 本音が交わらないまま進む“対話らしきもの” に慣れてしまっているのではないでしょうか。
その積み重ねが、
新しい視点が出てこない会議や、
波風は立たないが何も変わらない組織を生んでいるとしたら——
それは決して小さな問題ではありません。
参考記事|Crucial Learning Blog
今回のコラムは、Crucial Learning が公開している記事を参考情報としています。
対話や影響力に関するスキルが、
「人を操作するためのものではないか?」と受け取られてしまう背景について、
問題提起がなされている記事です。
▼ 原文はこちら
https://cruciallearning.com/blog/can-these-skills-be-used-to-manipulate-others/
本コラムでは、この記事を起点に、
日本の組織や職場で起きている構造的なズレを、TTIの視点で整理します。
TTIの視点|「操り」と「対話」の決定的な違い
TTIが一貫して大切にしているのは、
スキルの巧拙ではなく、その人が立っている前提です。
もし対話の場において、
- 相手を動かしたい
- 反論させずに受け入れさせたい
- できるだけ摩擦なくこちらの結論に導きたい
という意図が中心にあるとしたら、
どれほど洗練された言葉を使っても、
それはどこかで必ず伝わります。
なぜなら、人は、ロジックや表現以上に、
「この人は何を守ろうとしているのか」
「本当は何を望んでいるのか」
を感じ取るからです。
本音を明かさないまま、
「正しそうな言葉」や
「角の立たない表現」を重ねる。
その結果、
表向きは合意しているのに、
実行段階で腰が引けたり、
後から不満が噴き出したりする。
これは個人のコミュニケーション能力の問題というより、
対話を“操作の技術”として扱ってきた構造の問題ではないでしょうか。
今の組織に必要な、もう一段深い問い
私たちが考える対話には、
避けて通れない二つの要素があります。
1つ目は、自分の本音と向き合う覚悟です。
- 何を大切にしたいのか
- どこで譲れず、どこで迷っているのか
2つ目は、相手への敬意を失わない姿勢です。
- 相手にも立場や制約があることを理解しようとしているか
- 相手を「説得対象」や「調整対象」にしていないか
どちらか一方だけでは、対話は成立しません。
本音だけなら衝突になり、
敬意だけなら表面的な同調で終わります。
重要なのは、
「自分の本音」と「相手への敬意」を同時に持ったまま、
双方にとって意味のあるゴールを探ることです。
それは時間もかかり、
時に居心地の悪さも伴います。
しかし、そのプロセスを引き受けない限り、
組織の対話はいつまでも「無難なやり取り」の域を出ません。
まとめ|対話スキルが“力”になる組織とは
対話スキルが健全に機能する組織には、
共通した前提があります。
- 本音を出すことが、リスクではなく責任として扱われている
- 意見の違いは、関係性を壊すものではないと受け止められている
- 対話は「勝ち負け」ではなく「探索」だと理解されている
この土壌があって初めて、
スキルは「操作」ではなく「影響力」になります。
人材開発やリーダー育成に携わる方こそ、
「どんなスキルを教えるか」の前に、
対話をどんな行為として位置づけているのかを
一度、問い直してみてはいかがでしょうか。
※本記事は、Crucial Learning 社の公開記事を参考に、
Talk to Impact株式会社の視点で日本の組織における課題を整理したものです。